ノウハウ
ネット通販担当が知っておきたい特定商取引法のポイント
2021年4月12日
この十数年でネット通販は私たちの生活にすっかり定着し、いまや欠かせない存在になりました。お店でリサーチしてからネットで買うという消費者も少なくなく、企業側にとってネット通販のシステム強化が課題となっています。そこで今回の記事では、ネット通販の担当者が知っておくべき特定商取引法について、詳しく解説します。
特定商取引法とは
「特定商取引法」とは、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を未然に防ぎ、消費者の利益を守ることを目的につくられた法律です。かつては「訪問販売法(訪問販売等に関する法律)」と呼ばれていました。
消費者トラブルが起こりやすい特定の取引形態が対象とされており、消費者が安心して商品やサービスを購入・利用できるようにと定められたものです。
対象となるのはこの7つ
特定商取引法の対象となるのは、次の7つです。
- 訪問販売
- 通信販売
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引
- 特定継続的役務提供
- 業務提供誘引販売取引
- 訪問購入
いずれも消費者が店舗で商品を目で見て、販売者と直接コミュニケーションをとりながら購入するスタイルではありません。そのため、不適正な勧誘や消費者が泣き寝入りをするような悪徳な販売が起こりやすいとみなされ、厳格な法ができたというわけです。
ネット通販は「通信販売」に当てはまる
年々拡大しているネット通販は、上記の通信販売に当てはまります。
顧客が郵便や電話、FAX、メール、インターネットなどから商品・サービスの購入を申し込む形の取引なので、販売者の顔が見えない点が消費者にとって不安要素ではないでしょうか。もちろん、販売者側のリスクも通常の店舗販売に比べて高くなります。予期せぬトラブルをできるだけ回避するため、ネット通販担当者は特定商取引法をしっかりとチェックしておきましょう!
通信販売における特定商取引法<行政規制>
特定商取引法には、「行政規制」と「民事ルール」の二種類があります。まずは、違反行為が認められた場合、罰則処分となってしまう行政規制の中から特に注意したい5つを順にチェックしていきましょう。
1. 広告の表示(法第11条)
ネット通販では、消費者にとって唯一の情報源が広告ページです。そのため、
- 事業者の名称(氏名)・住所・電話番号
- 販売価格
- 送料の有無
- 商品の引き渡し期間
- メールで商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス
- 返品を認めるか、認める場合の条件、送料負担の有無
などをハッキリと明記しておくことが大切です。
<怠るとこんなトラブルが…!>
広告の表示に関しては、ネット通販の特定商取引法の中で特に重要なポイントです。明記しておかなかったがために、消費者からクレームが来たり、思わぬトラブルへと発展してしまったりします。
たとえば、よく起こるトラブルが「届いた商品について問い合わせをしたいが、連絡がとれない」というケース。住所は省略せずに部屋番号まで明記する、日中つながる電話番号を載せるなどは必須です。
また、「海外からの入荷が大幅に遅れ、発送時期が1ヶ月半ほどずれ込んでしまった。商品の引き渡し期間に関する情報を明記していなかったため、注文のキャンセルが多発してしまった」といった事例も多々あります。特に海外からの輸入商品の場合は、商品発送が遅延する可能性があることを記しておくと安心です。
2. 誇大広告等の禁止(法第12条)
消費者の誤解を招くような表現や記載も禁じられています。
- 著しく事実に相違する表示
- 実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示
これらは、消費者からのクレームのもとです。商品をより良く見せて購入者を増やしたい気持ちはわかりますが、あまりにも誤解を招く表現や写真の加工などは避けましょう。
3. 未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止(法第12条の3、12条の4)
消費者が事前に承諾していない場合、事業者から電子メール広告を送信することは原則禁止されています。これを「オプトイン規制 」といい、迷惑メール対策として導入されました。
この規制は、ネット通販の事業者だけでなく、通信販売電子メール広告受託事業者も対象です。そのため、もしも消費者から電子メール広告の提供について承諾や請求を受けた場合は、最後に電子メール広告を送信した日から3年間、その承諾や請求があった記録を保存することが必要です(ただし、対象外のケースあり)。あわせて、チェックしておきましょう。
4. 前払式通信販売の承諾などの通知(法第12条)
クレジットカードや振り込みなど、ネット通販ではいわゆる前払いが主流ですが、さまざまなトラブルの原因となることを忘れてはいけません。
消費者が商品の引渡し(権利の移転、役務の提供)を受ける前に、代金の全額もしくは一部を支払う「前払式」のネット通販の場合、事業者は、代金を受け取った後の商品引渡しに時間がかかるときには、その申込みの諾否などを記した書類を消費者に渡す必要があります。
5. 顧客の意に反して契約の申し込みをさせようとする行為の禁止(法第14条 )
インターネット広告から商品を注文する場合、購入ボタンの位置やわかりやすさはとても重要なポイントです。
たとえば、購入ボタンだとわからず、うっかりクリックしてしまうようなサイトのつくりはNG!
- 最終的な申込みにあたるボタンのテキストに「私は上記の商品を購入(注文、申込み)します」と表示されている
- 最終的な申込みにあたるボタンに近接して「購入(注文、申込み)しますか」との表示があり、ボタンのテキストに「はい」と表示されている
※特定商取引法ガイド:インターネット通販における「意に反して契約の申込みをさせようとする行為」に係るガイドラインより引用
上記のような明確なテキストを入れて、消費者が誤って契約しないような配慮を心がけましょう。
通信販売における特定商取引法<民事ルール>
消費者の利益を守るため、民事ルールも存在します。こちらもしっかり確認しておきましょう。
契約の申込みの撤回または契約の解除(法第15条の3)
ネット通販は、Webサイトや広告画面を見たうえで、じっくり検討した後に契約するとみなされるため、いわゆるクーリングオフ制度は適用されません。基本的には、販売側の事業者が定めた返品特約(返品の可否、条件、送料の負担の表示)に従うのがルールです。
ただし、広告に返品特約の表示をしていない場合は、商品を受け取ってから8日を経過するまでの間は返品が可能です(返品送料は購入者負担)。
後々問題になりやすい点なので、ハッキリと規定を明記しておきましょう。
事業者の行為の差止請求(法第58条の19)
ネット通販の広告について、販売事業者が不特定かつ多数のユーザーに対して誇大広告などを行った場合(または行う恐れがある場合)、事業者に対して行為の停止もしくは予防、その他の必要な措置をとることを、適格消費者団体により請求できます。
要は、誤解を招くような表現はできるだけ避けるのが一番だということですね!
まとめ:消費者の立場で考えてみよう!
少し難しい規定内容もありましたが、一番大切なのは「自分自身が消費者として、この広告から購入することに不安を感じないか?」という視点を持つことではないでしょうか。少しでも怪しい、申し込むのが不安だと感じる点は、必ず消費者も感じる違和感です。正しい情報をわかりやすく掲載し、お客様に愛され信頼されるネット通販を心がけましょう!