ノウハウ
マーケティング手法を理解し、分析や戦略立案に役立つ用語やフレームワークをおさらいしよう
2023年4月17日
企業のマーケティング担当の方のなかには、「自社に最適なマーケティング手法がわからない」と、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、代表的なマーケティング手法や分析手法・フレームワークを解説していきます。マーケティングについて理解を深め、自社の売上改善や課題の解決に役立ててください。
目次
マーケティング分析とは
近代マーケティングの父といわれるフィリップ・コトラーは、マーケティングを下記のように定義しています。
「マーケティングとは、個人および集団が、製品および価値の創造と交換を通じて、そのニーズやウォンツを満たす社会的・管理的プロセスである。」
※「Marketing Management」– 第9版
簡単にまとめると、「需要や欲求を満たす製品やサービスを作り出し、売れる仕組みを作る過程がマーケティング」だといえます。
マーケティング分析は、自社を取り巻く環境や自社の立ち位置・顧客のニーズなどを集めて分析すること。また、分析したデータをもとに、自社に最適なマーケティング戦略を立案するまでの一連の流れを指します。
なぜマーケティング分析は重要なのか
インターネットやSNSの発展に伴い、消費者の消費行動は大きく変化し、多様なニーズが顕在化しました。
このような社会で企業が利益を最大化させるためには、多様なニーズに応えられる、従来よりも精度の高いマーケティング戦略が必要です。
しかし、精度の高いマーケティング戦略を立案するためには、顧客のニーズや市場動向など、さまざまな情報を収集し分析しなければなりません。
この、情報を集めて分析するという部分が「マーケティング分析」にあたります。
また、利益の最大化に加え、適切なマーケティング分析を行うことで、商品のプロモーションや新規顧客の開拓、施策の立案などを効果的に行うことができるため、効率化を実現できるという点でも非常に重要な役割を担っています。
代表的なマーケティング手法7選
現代において顕在化しているさまざまなニーズに応えるため、マーケティング手法も多様化しています。
この記事では、数多く存在するマーケティング手法の中から、たくさんのシーンにおいて活用されている代表的なマーケティング手法について解説します。
- Webマーケティング
- コンテンツマーケティング
- インバウンド・アウトバウンドマーケティング
- SNS・インフルエンサーマーケティング
- 動画マーケティング
- メール・DMマーケティング
- O2Oマーケティング
Webマーケティング
Webマーケティングとは、WebサイトやSNS・Web広告など、インターネット上で行うマーケティング活動全般の総称です。
2021年以降、テレビなどマスメディアの広告費をインターネットの広告費が上回り、前年の2022年には3兆円を突破するなど、Webマーケティングは、現代においてなくてはならないマーケティング手法となっています。
画像引用:株式会社電通公式サイト「2022年 日本の広告費」より
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、コンテンツ(有益な情報)を用いて行うマーケティング活動です。
有益な情報とは、「プロテインを飲む適切なタイミング」・「ニキビが治るスキンケア方法」など、ターゲットの顧客に価値を感じてもらえる情報を指します。発信媒体は問わず、メルマガやWebサイト・パンフレットなど特に制限はありません。
コンテンツマーケティングでは、積極的な売り込みはせずに発信媒体を通じて定期的にコミュニケーションを取ることで、顧客との関係維持や将来的な売り上げにつなげることを目的とします。
インバウンド・アウトバウンドマーケティング
インバウンドマーケティングが、情報を発信して「顧客に見つけてもらう」方法である一方、アウトバウンドマーケティングは「顧客に情報を売り込む」方法を指します。
たとえば、飛び込み営業やメールでの営業などはアウトバウンドマーケティングにあたります。
アウトバウンドマーケティングには絶えず営業をかけ続ける必要があること、一方的に売り込むことで、マイナスイメージを与えてしまうなどのデメリットがあります。
一方、インバウンドマーケティングでは、企業は情報を適切な形で発信するだけでよく、顧客自らが情報を見つけ、行動してくれます。
発信後は待っているだけでお問い合わせや商品の購入が行われるため、営業の手間が省ける、企業イメージを下げないで済むといったメリットがあります。
しかし、発信する情報によってユーザーの行動を促さなければいけないため、緻密な戦略が必要です。
SNS・インフルエンサーマーケティング
SNSマーケティングとは、ソーシャルメディア(LINE・Twitter・Instagram・Facebookなど)を用いて行うマーケティング活動です。
また、インフルエンサーマーケティングはSNSマーケティングの1つで、影響力をもつ「インフルエンサー」に、商品やサービスを紹介してもらい顧客の消費行動を促す・認知度の拡大を目指す手法です。
動画マーケティング
動画マーケティングとは、TikTokやYouTubInstagramのリール投稿など動画を活用したマーケティングです。
テキストや画像と比較すると訴求できる情報量が圧倒的に多いため、短い動画でも高いプロモーション効果を生むことが可能です。
また、視覚だけでなく聴覚にも訴えることができるため、情報量はテキストのおよそ5,000倍とも言われており、Forrester ResearchのJames L. McQuivey博士が発表した研究によると、1分間の動画で180万語分の情報を伝達できるとされています。
メール・DMマーケティング
メール・DMを用いたマーケティング手法を、メールマーケティング・DMマーケティングと呼びます。
メルマガなどが代表例で、比較的昔から使われているマーケティング手法です。SNSが発展したことで、DM(ダイレクトメッセージ)を用いた方法も開拓されています。
メール・DMマーケティングは、ニーズの多様化に伴って、さまざまな変化を遂げていることが特徴です。
- ステップメール:購買行動までのシナリオに沿ってメール配信を行う
- セグメントメール:顧客を属性によってセグメント(細分化)し、属性ごとに最適な情報をメールで配信する
- パーソナライズメール:セグメントメールよりももっと細かく、個人レベルで細分化し、最適な情報をメールで配信する
以前のメール・DMマーケティングは、大多数に向けて同じ情報を発信する形でしたが、ニーズに合わせ上記のような変化を遂げています。
O2Oマーケティング
Online to Offlineマーケティングを表す言葉で、インターネット上で宣伝を行い、実店舗に足を運んでもらうことを目的とする手法です。
実店舗を持つショップや飲食店などと相性がいいマーケティング手法で、SNSやWebサイトなどを用いて行います。
実店舗運営だけではリーチできなかった遠方の見込み客にもリーチできる可能性が高く、足を運んでもらった際に、サービスに満足してもらえればリピート客を獲得できる可能性もあります。
戦略立案に活用できる分析手法・フレームワーク8選
続いて、マーケティング戦略の立案に効果的な分析手法やフレームワークを8つ解説します。
- 3C分析
- PEST分析
- STP分析
- ファイブフォース分析
- SWOT分析
- 4P分析
- VRIO分析
- ファネル分析
すでに確立されている分析手法に当てはめて分析を行うことで、今まで気付かなかった観点からの分析もできるでしょう。
3C分析:自社を含めた3観点で環境分析
3C分析とは、下記3つの観点から自社を取り巻くビジネス環境を分析する手法です。
- Customer:顧客(市場)
- Competitor:競合
- Conpany:自社
3C分析を行うことで、市場における自社のポジションや顧客(市場)のニーズに対して自社が持っている強みを導き出すことが可能です。
PEST分析:外部環境を4観点から分析
PEST分析とは、先ほど紹介した「近代マーケティングの父」と呼ばれる、フィリップ・コトラーが考案したフレームワークで、下記4つの観点から自社を取り巻く外部環境を分析します。
- Politics(政治的要因):政治の動向・法律の改正など
- Economy(経済的要因):為替の動向・景気など
- Society(社会的要因):流行・人口など
- Technology(技術的要因):AIなどの新しい技術など
外部環境の変化は、自社ではコントロールできない部分です。
しかし、PEST分析を使うことで、自社に起こりうる損害や恩恵などを予測することができるようになります。
STP分析:市場や競合に対してのポジショニングを分析
STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)を行い、市場や競合に対して、自社商品やサービスのポジショニングを分析する手法です。
STP分析もフィリップ・コトラーが提唱したフレームワーク。
- Segmentation:市場や顧客を細分化する
- Targeting:細分化したグループの中から、自社が狙うべきターゲットを定める
- Positioning:自社商品・サービスが優位となるポジションを取る
基本的には、S→T→Pの順番で分析を行っていきますが、分析はどこから行っても問題はなく、それぞれの要素を行き来することで、より精度を高めることができます。
自社の商品やサービスを作成する段階や発表する段階で行うことが多い分析手法です。
5(ファイブ)フォース分析:5つの観点から収益性の高い事業を分析
5フォース分析は、PEST分析と同じく、自社を取り巻く環境を分析し、収益性の高い事業を構築する際に行う分析です。
下記5つの競争要因を分析していきます。
- 競合企業
- 新規参入企業
- 代替商品やサービス
- 供給企業(サプライヤー)の競争力
- 買い手(顧客)の交渉力
自社の競争力を客観視するとともに、脅威となる要因を分析することで、収益性や自社の市場優位性などを分析することが可能です。
SWOT分析:自社事業の状況を4観点から分析
SWOT分析は、内部環境と外部環境に分けて分析を行う手法です。
- 内部環境
Strength:強み
Weakness:弱み
- 外部環境
Opportunity:機会
Threat:脅威
4つの環境要因を導き出せたら要因同士を掛け合わせた分析(クロスSWOT分析)を行い、自社の強みの強化と弱みを克服するための戦略立案に役立てましょう。
例:「Strength」×「Opportunity」=強みを活かして機会(チャンス)を最大限活かす戦略
4P分析:自社商品・サービスを4観点から分析
4P分析とは自社商品・サービスを顧客に対してどう売り込んでいくかを、下記4つの観点から分析する手法です。
- Product(商品・サービス)
- Price(価格)
- Place(場所・提供方法)
- Promotion(宣伝活動)
どのような商品・サービスを、いくらで、どこで、どのような方法で売り込んでいくのか、分析していきます。
ちなみに、4Pは「マーケティングミックス」と呼ばれることがあり、マーケティングにおける実行戦略に位置付けられています。
具体的なマーケティング施策を立案する際に、おすすめの分析手法です。
VRIO分析:自社の経営資源を分析
VRIO分析とは、下記4つの観点から自社の経営資源を分析するフレームワークです。
- Value(経済価値)
- Rareness(希少性)
- Imitability(模倣可能性)
- Organization(組織)
経営資源とは、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」「時間」「知的財産」の6つを指し、VRIO分析では、経営資源を総合的に分析していきます。
VRIO分析での経済価値は、単純な売り上げはもちろん、社会へのインパクトなども評価します。
希少性や模倣可能性は、自社の独自性や再現性などを測る指標で持続可能性があるかなどを分析していきます。
VRIO分析は、経営戦略を立案する際などに役立つフレームワークです。
ファネル分析:消費者行動を段階ごとに分析
ファネル分析とは、顧客が商品・サービスの認知から消費行動に至るまでの流れを細分化し、どの時点で離脱してしまっているかを分析する手法です。
- 商品・サービスを認知
- 興味を持ち比較検討する
- 購入する
たとえば、上記の2と3の間で離脱が多いことが分析によりわかった場合には、「競合商品との差分を改善」、「購入プロセスの簡略化」など、問題点が認知でき改善につなげられます。
ファネル分析により。離脱ポイントを分析することで、気付いていなかった欠陥に気付ける可能性が高まるでしょう。
分析手法・フレームワークを活用する際の注意点
分析手法・フレームワークを活用することで、効率的なマーケティング分析が可能ですが、ミスリードにつながってしまう危険性がありますので注意しましょう。
本記事で紹介している分析・手法フレームワークはどれも汎用性が高く、多角的にマーケティング分析を進めることが可能ですが、時代の流れとともに陳腐化していく可能性もあります。
「この手法を用いたから大丈夫」というのではなく、広い視野を持ち、現在の状況に適した手法をその都度当てはめて利用することが大切です。
臨機応変に使い分けられるよう、知識としてさまざまな分析手法やフレームワークを知っておくといいでしょう。
また、フレームワークは、あくまでマーケティングを進めていくうえでの1つの手段にすぎません。分析自体がゴールとならないよう注意が必要です。
フレームワークを利用し、最適なマーケティング戦略を立案・実行すること、そして現在抱えている課題を解決することを目指しましょう。
知っておきたいマーケティング用語一覧
最後に、マーケティングを行っていくうえで、知っておきたい用語をピックアップしましたので、ひとつずつ紹介します。
- AIDMA(アイドマ)
- AISAS(アイサス)
- SIPS(シップス)
- ペルソナ
- カスタマージャーニー
- セグメント
- クリティカルマス
- キャズム
- LTV(ライフタイムバリュー)
チームとして、分析手法・フレームワークをはじめ、マーケティング用語に対しても共通の理解を深めておくことで、スムーズな議論ができるでしょう。
AIDMA(アイドマ)
AIDMAは、消費者が商品・サービスを認知してから購買行動に至るまでの変化を表す、頭文字を組み合わせたマーケティング用語です。
- Attention(注意):商品・サービスを認知する
- Interest(関心):興味・関心を持つ
- Desire(欲求):商品・サービスが欲しくなる
- Memory(記憶):商品サービスを記憶する
- Action(購入):購買行動を起こす
AIDMAを用いることで、顧客が現在どの段階にいるかを整理ができ、それぞれに対して最適なアプローチ方法を選択できるでしょう。
AISAS(アイサス)
AISASは、AIDMAと同様、消費者が商品・サービスを認知してから購買に至るまでの変化を表す頭文字を組み合わせたマーケティング用語ですが、AIDMAよりも現代の消費行動に近い変化を表しています。
- Attention(注意):商品・サービスを認知する
- Interest(関心):興味・関心を持つ
- Search(検索):商品・サービスを検索し情報を集める
- Action(行動):購買行動を起こす
- Share(共有):購入後にSNSなどで情報を共有する
消費行動はインターネットの発展とともに消費者は自ら検索して情報を入手できるようになりました。
また、商品を購入して終わりではなく、レビューなどの形で情報をシェアするようになったことも大きな変化といえます。
AISASでは、上記の変化が的確に表されています。
SIPS(シップス)
SIPSは、ソーシャルメディアを通じた消費行動のプロセスを表す頭文字を組み合わせたマーケティング用語です。
- Sympathize(共感):共感できる情報を発見する
- Identify(確認):情報を集め確認する
- Participate(参加):いいね!やリツイートなどで参加する
- Share & Spread (共有 & 拡散):購入後に情報を共有・確認する
Participateの段階では、購入の有無を問わず、応援や伝達などを全て包括して「参加」と表すことがSIPSの特徴です。
ソーシャルメディアを通じた購買行動が普及している現代社会において、SIPSは、特に現代に即したマーケティング用語といえるでしょう。
ペルソナ
ペルソナは、ターゲットよりもさらに深くまで定義したユーザー像です。性別や年齢をはじめ、職業・住んでいるところ・家族構成・趣味など、1人の人物が想像できるまで、突き詰めていくことが大切です。
ユーザー像の解像度を上げていくことで、より適切なアプローチ・効果的なマーケティングを行うことができます。
カスタマージャーニー
カスタマージャーニーは、「顧客の旅」という意味を持ち、消費者が商品・サービスを認知してから購買行動を起こすまでの過程を表します。
AIDMA・AISAS・SIPSと同様に、顧客がどの段階にいるのか把握できることにくわえ、どんな心理状態でいるのかを時系列で把握できるため、よりパーソナライズ化されたアプローチ手法を選択できるでしょう。
セグメント
セグメントとは、ターゲットを属性ごとに分類したまとまりや区分のことです。
共通のニーズなど多種多様な変数を元に、顧客の集団を区分することで、セグメントごとに最適なアプローチが実現できます。
クリティカルマス
クリティカルマスは、商品やサービスの普及率の伸びが一気に跳ね上がる分岐点を指します。
通常、商品・サービスが市場に登場すると、最初に一番先進的なイノベーターと呼ばれる消費者層に受け入れられ、次に流行に敏感なアーリーアダプターと呼ばれる層に広がっていき、徐々に一般層に普及していきます。
このプロセスのなかで、市場全体の普及率がある一点に到達すると普及率が跳ね上がることがあります。
この普及率が跳ね上がる点がクリティカルマスです。
キャズム
キャズムとは、「深い溝」という意味があり、顧客に商品やサービスを認知してもらい、浸透させていく段階でぶつかる、大きな障害のことを指します。
イノベーター・アーリーアダプター・アーリーマジョリティという顧客層の流れで商品が浸透していく中で、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にキャズムがあると言われています。
LTV(ライフタイムバリュー)
LTV(ライフタイムバリュー)は、顧客生涯価値を意味するマーケティング用語です。
顧客生涯価値とは、ある顧客と取引を開始してから終了するまでの期間に、顧客がもたらしてくれる利益を指します。
LTVは、成果指標や目標値として機能するため、マーケティング戦略をはじめ、経営判断などにも利用可能です。
まとめ
ここまで、マーケティング分析について、マーケティング手法をはじめ、分析方法やフレームワークについて解説しました。
分析手法やフレームワークの活用は、マーケティング分析を進めていくうえで。高い効果を期待できます。
しかし、ミスリードを招いてしまう、分析が目的となってしまう可能性がある点に注意しましょう。
本記事を参考に、自社のマーケティング活動に活用して課題解決にお役立てください。