ノウハウ
テレワークを自社に導入する際に必要なこと5つ
2023年3月1日
テレワークは、従業員のライフワークバランスを向上させ、交通費や経費を削減できる働き方です。新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言をきっかけに、多くの企業がテレワークを導入しました。
しかし、テレワークはコミュニケーションや業務フロー、人事評価など、多くの課題を抱えています。
そこで本記事では、テレワーク導入時の課題やその解決策について解説します。事前にリスクをしっかり把握した上で、テレワークを導入するかどうかを検討してください。
テレワークと在宅勤務の違い
テレワークとは、「オフィスから離れた場所で働くこと」を指します。自宅やカフェ、サテライトオフィスなど、自由に働く場所を選べます。
一方、在宅勤務は「自宅で働くこと」を指し、テレワークの労働形態のひとつです。
在宅勤務は、自宅を就業場所とするため、通勤の負担がなくなります。また、プライベートの時間が増加するため、ライフワークバランスが向上し、従業員満足度が高まります。
在宅勤務のメリットやデメリットについては、以下の記事を参考にしてください。
・在宅勤務の企業・従業員それぞれのメリット・デメリットと導入時の注意点を解説!
テレワーク導入における現状
都内企業(従業員30人以上)を対象に、テレワーク実施状況の調査を行ったところ、令和4年の12月時点でテレワークの実施率は52.4%となりました。
令和2年から令和4年12月までのテレワーク実施率の推移は、以下の通りです。
引用元:東京都産業労働局 令和4年 テレワーク実施率調査結果の概要
緊急事態宣言期間の終了後、テレワークの実施率は一時的に低下しましたが、令和4年12月時点では過半数の企業がテレワークを実施しています。
次に、従業員規模別のテレワーク実施率を確認しましょう。
引用元:東京都産業労働局 令和4年 テレワーク実施率調査結果の概要
企業の従業員規模に比例して、テレワークの実施率が高いです。さらに、全体の5.8%の企業がテレワークを「今後実施予定あり」と回答しており、6割近くの企業がテレワークに積極的であることが読み取れます。
また、多くの企業がテレワークを実施していることから、テレワークには、「業務効率化や従業員の満足度向上など一定の効果がある」と推測できます。
テレワーク導入時に企業が抱える7つの課題
テレワークを導入しても、必ずしも良い結果が得られるわけではありません。テレワークが抱える課題やリスクを7つ紹介します。
①情報漏洩リスクの高まり
オフィスでは、社内ネットワークへの接続が基本ですが、会社の外で仕事をするテレワークでは、ルールを設けないとさまざまなネットワークを使うことができてしまうため、情報漏洩リスクが高まります。
外部のネットワークを使うと、ウィルスの感染やネットワークへの不正侵入、ハッキングなど、外部の攻撃を受けるリスクが生じ、機密情報漏洩などの事故にもつながる可能性があります。
各従業員にデータの誤送信や文書の紛失に注意させることはもちろん、セキュリティソフトの導入やセキュリティ教育が必須です。
テレワーク時にも社内ネットワークを介してインターネットにアクセスするようにルール決めを行ったり、デバイスのロック機能を設定したりするなど、セキュリティに対する運用ルールや社内研修を行った上でテレワークを導入しましょう。
②コミュニケーション不足による生産性の低下
リモートワークにおいて課題となりがちなのが、コミュニケーション不足です。
メールやチャットでのコミュニケーションでは、人によってはレスポンスが遅くなったり、指示があいまいになってしまったりと、コミュニケーション不足による業務効率の悪化や生産性の低下を招く可能性があります。
また、各タスクの優先順位や期限が曖昧になり、適切なタスクの割り当てができなくなります。結果として、一部の従業員に仕事が偏ったり、全体の進捗が遅くなったりすることが予想されます。
テレワーク時に生産性を維持するためには、社員全員がメールやチャットといった非同期コミュニケーションツールでしっかりと業務を進めるテレワークリテラシーを高める必要があります。コミュニケーション量も意識的に増やすことが必要になるでしょう。
そのためには、チャットツールの導入やプロジェクト管理ツールの導入が有効です。
③勤務管理や人事評価の困難さ
テレワークでは社員各自の勤務状況が見えにくくなるため、従業員の勤務管理や人事評価が困難になります。
こうした環境下では、成果を中心とした人事評価にならざるを得ませんので、これまで業務プロセスを軸とした評価制度を採用していた企業は、評価制度についての見直しも求められます。成果を数値化しにくいバックオフィス・ミドルオフィス部門においても、妥当性のある目標設定をしっかり行い、社員にとっても納得感のある評価制度を作る必要があります。
また、評価制度だけでなく勤務管理も見直しが必要です。テレワークでは勤務の開始や勤務の終了があいまいになることも考えられますので、何もしないと時間外労働が増えてしまうなどのリスクもあります。
どのように勤務管理を行うのか、そしてその成果をどのように評価するのか、テレワーク導入と合わせて検討することが必要です。
④ペーパーレス化や社内の業務フローの変更などが必須となる
テレワークに完全移行することを目的とするのであれば、すべての仕事がオンラインで完結するように、社内の業務フローを変更する必要があります。
一例として挙げられるのが、情報共有やコミュニケーションの方法、タスク管理やチェック体制などです。
また、捺印や書類を受け取るためだけに、オフィスに出社するのは非効率的であるため、ペーパーレス化も必須となります。紙の書類を電子化し、クラウドストレージや電子署名などを活用することで、テレワーク主体の業務フローを構築できます。
テレワーク導入時には、業務効率や生産性が低下しないように、業務効率化に役立つクラウドツールの導入を検討してください。
⑤環境整備のための導入コストが発生する
テレワークの導入時に必要となる費用は、以下の通りです。
- オフィスの整備:デスク、椅子、モニター、キーボード
- デバイスの購入:パソコン、タブレット、スマホ
- 通信環境の構築:インターネット回線
- クラウドツールの導入:勤務管理やプロジェクト管理ツールなど
- セキュリティ対策:セキュリティ対策ソフトやセキュリティ研修など
こうした設備費用や手当を支給する場合は、その導入コストが負担になることを認識しておきましょう。
一方で、テレワーク導入により営業交通費や各種経費が削減できる可能性も十分ありますので、導入にかかるコストと削減できるコストを照らして意思決定することが重要です。
⑥テレワーク対象にならない部署や業務が発生する
テレワークは、すべての部署や業務に適用できるわけではありません。
たとえば、接客や現場作業が必要な業務や、紙の業務が多い部署などでは、テレワークへの移行が難しいです。とはいえ、自社の中で一部の部署や部門のみでテレワークを実施すると公平性に欠けるため、やむなくテレワークを断念せざるを得ない場合もあるでしょう。
評価制度と合わせて、納得感のある制度設計が求められます。
⑦そもそもテレワークが難しい業種がある
国土交通省の調査によると、以下の業種ではテレワーカーの割合が低くなっています。
- 保健医療、社会福祉、法務、経営、教員などの専門、技術職
- サービス業、販売業
- 保安、農林漁業
- 生産、輸送、建設、採掘、運搬、清掃 など
引用元:国土交通省 報道資料
基本的に、上記の業種では、テレワークの導入が難しいとされています。これらの業種では、フレックスタイム制度や時差出勤などの働き方を取り入れて、従業員の満足度向上を目指しましょう。
テレワーク導入時の課題に対する3つの解決策
テレワークの導入の課題に対する解決策として、以下の3つが挙げられます。
①クラウドツールやサービスを活用する
テレワークを導入するなら、クラウドツールの導入は必要不可欠です。
クラウドツールを活用することで、以下のようなメリットがあります。
- 円滑なコミュニケーションの実現
- 適切な勤怠管理やタスク管理ができる
- ペーパーレス化の促進
- セキュリティ対策ができる
ビデオ会議やチャットツールを活用することで、従業員同士がオフィスでのコミュニケーションに近い感覚でやりとりができます。定期的なオンライン面談や交流会を実施して、気軽に雑談ができる機会を設けましょう。
クラウドツールで業務時間や業務内容を可視化すると、各従業員の勤務状況を把握しやすくなります。また、タスクの進捗管理が容易になり、適切にタスクの割り振りができます。
書類はオンラインストレージで管理して、ペーパーレス化を実現しましょう。資料を迅速に共有することで、業務効率の向上が見込めます。
クラウドツールは、誰でもアクセスしやすいため、セキュリティを重視したサービスが多いです。クラウドツールで企業の情報を管理することでセキュリティを強化できます。
ただし、IDやパスワードの流出やハッキングなどのリスクも伴うため、テレワーク導入前にセキュリティ教育を徹底し、情報漏洩リスクを軽減してください。
②業務フローや人事評価制度を見直す
テレワーク導入前の業務フローは、オフィスでの勤務を前提として設計されています。
テレワークに移行してからも円滑に業務を進行するためには、業務フローの変更が必須です。以下のワークフローの変更例を参考にしてください。
- メールやチャットで始業や終業の連絡を行う
- 定時には業務を終了する
- タスクの登録や完了チェックを行う
- 確認したチャットにはリアクションをつける
- 重要なチャットはピン留めする
- 返信の時間帯は朝◯時〜夜◯時までとする
テレワークでは、コミュニケーション不足に陥りやすいため、連絡に関するマナーやルールを明確に定めることが重要です。
また、始業時間や終業時間だけでなく、遅刻や早退、出勤日数などの基準を設けて、勤務時間を明確にしてください。
新しい業務フローの確立や定着には時間がかかるため、社員が率先してルールを徹底しましょう。
テレワーク移行後は、人事評価の方法を見直す必要があります。
定期的な面談を実施して業務プロセスを確認したり、目標管理制度を採用したりして、公平な評価システムを目指しましょう。評価基準や評価項目を明確化して、従業員に共有することも重要なポイントです。
テレワークを行う従業員と行わない従業員がいる場合は、それぞれ評価方法が異なります。従業員が納得できるように、事前に説明することが望ましいです。
③助成金や補助金を活用する
テレワーク環境を整えるのは費用が発生するため、企業がすべてを負担するのは難しいです。テレワークの導入時には、国や地方自治体の助成金や補助金を積極的に活用しましょう。
たとえば、ITツール導入費用の50%を負担してくれる「IT補助金」や、テレワークを実施する企業に100万円の助成金を支給する「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」などがあります。
また、デバイスの購入費用やセキュリティ対策費用など、テレワークに必要な費用を一部援助してもらえます。
補助金や助成金のくわしい内容は、国や地方自治体のホームページを確認してください。
助成金や補助金を活用することで、テレワーク導入に伴う負担を軽減できます。
まとめ
テレワークへの移行で発生する、コミュニケーションやセキュリティ面、勤怠状況の把握などの課題はクラウドツールの導入によって解決できます。テレワークの導入費用が負担になる場合は、国や地方自治体の補助金や助成金を利用しましょう。
また、テレワークでは円滑に業務を進行するために、業務フローを変更する必要があります。新しい業務フローが定着するまで、従業員にルールを徹底させることが重要です。