ノウハウ
在宅勤務の企業・従業員それぞれのメリット・デメリットと導入時の注意点を解説!
2023年1月18日
テレワークと在宅勤務の違いをご存知でしょうか?
テレワークとは、「スマートフォンやパソコンなどの情報通信機器を活用した、時間や場所に囚われない働き方のこと」です。感染症対策での行動制限をきっかけに普及し、幅広い業種の企業に導入されています。
「在宅勤務」は、テレワークの労働形態のひとつです。ワークライフバランスが充実する新しい働き方として注目されています。在宅勤務制度の導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では、在宅勤務のメリット・デメリットや在宅勤務を導入する際のポイントを解説します。在宅勤務への移行によって生産性を維持・向上させるためにも、ぜひ本記事を最後まで読んでいただけたら幸いです。
目次
日本国内におけるテレワークの導入状況と今後の活用予定
総務省の調査結果を元に、「テレワークを導入している企業の割合」や「今後、テレワークの活用を予定している企業の割合」を確認しましょう。
国内のテレワーク利用状況について
年代別のテレワークの利用状況は、以下の通りです。
「生活や仕事のうえで活用が欠かせない」と回答した方は、全年代で約10%です。
20〜29歳や30〜39歳の年代で、「生活や仕事のうえで活用が欠かせない」や「便利なので積極的に活用している」と回答した方の合計は20%を超えており、約5人に1人がテレワークを活用していることがわかります。
20〜29歳の年代では「今後利用してみたいと思う」と回答する方が11.9%と、全年代では最も高く、テレワークに対して前向きです。若年層に限らず、40〜49歳の年代でも「今後利用してみたいと思う」と回答した方は7.5%もいるため、一定数の方はテレワークに対して肯定的であるといえるでしょう。
ただし、年齢の高さに比例して、テレワークに対して消極的になる傾向にあります。60〜69歳の年代では「今後利用してみたいと思う」と回答した方は、僅か3.5%です。「必要としていない」と回答した方が62.6%と割合が高いことから、年齢が上がるにつれて環境が変化することに抵抗があると考えられます。
次に、企業別のテレワークの導入状況を確認しましょう。
導入状況と今後の活用見込みについて
以下の画像が、令和4年度のテレワークの導入状況を示しています。
「従前から導入」や「コロナ対策のため導入」と回答した方の合計の割合は28%です。つまり、約4分の1の企業がテレワークを導入しています。
新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、テレワークを導入した企業のうち76.6%の企業が継続してテレワークを活用する予定です。さらに、17.0%の企業がテレワークの活用を検討しています。
今後も多くの企業がテレワークを導入すると考えられるでしょう。
在宅勤務はテレワークの労働形態のひとつ
テレワークは、「tele(距離が遠い)」と「work(働く)」を合わせた造語です。
厚生労働省が定めた区分によると、テレワークとは「情報通信技術を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」を指します。言い換えると、テレワークは「本拠地のオフィスから離れた場所を就業場所とする働き方のこと」です。
インターネットを活用して、会社のオフィスから離れた場所を就業場所とする働き方は、全てテレワークに分類されます。在宅勤務はテレワークの一種で、「オフィスに出社せず自宅を就業場所とする働き方」を指します。
テレワークの種類は、「在宅勤務」「サテライトオフィス勤務」「モバイルオフィス勤務」の3つです。
それぞれの働き方について、以下で説明します。
自宅で作業を行う在宅勤務
在宅勤務とは、「本来の勤務先から離れ、自宅を就業場所とする労働形態のこと」です。
ひとことで「在宅勤務」と表現しても、週1日や1日数時間のみを自宅で働く「部分在宅勤務」や、自宅で全ての仕事が完結する「完全在宅勤務」があります。
本拠地から離れた場所へ就業するサテライトオフィス勤務
サテライトオフィス勤務とは、「企業の本社や本拠地から離れた場所にある小規模なオフィスを就業場所とする働き方のこと」を指します。サテライトオフィスの設備は、本社ほど本格的ではないものの、必要最低限の設備が整っており、簡単な業務を行えます。
自宅にインターネット環境がない方や仕事環境を構築するスペースがない方でも、サテライトオフィスを利用すれば、テレワークが可能です。
サテライトオフィスには、専用型と共有型の2種類があります。
専用型は、企業が専用に所有しており、主に自社や自社のグループ会社の役員、従業員が利用するサテライトオフィスです。営業中や出張中に立ち寄る場所としても利用されています。
対して、共有型とは、複数の企業や個人事業主などが自由に利用する共有のサテライトオフィスです。「シェアオフィス」や「コワーキングスペース」とも呼ばれます。
営業職に多く見られるモバイルオフィス勤務
モバイルオフィス勤務とは、「スマートフォンやノートパソコンなどを使用して、移動中の交通機関や顧客先、カフェやホテルなどを就業場所とする働き方のこと」です。営業職のような、頻繁に外出する職種の方に適しています。
モバイルオフィス勤務のメリットは、仕事の空き時間を利用して、業務を効率良く行える点です。顧客からの急な呼び出しにも迅速に対応でき、交通費や経費の削減にもつながります。
在宅勤務制度の導入における企業側のメリット
在宅勤務制度を導入する、企業側の4つのメリットを紹介します。
- 交通費やファシリティコストを削減できる
- 業務効率や生産性向上が期待できる
- 場所にとらわれず優秀な人材を採用できる
- 離職率の低下を図ることができる
交通費やファシリティコストを削減できる
在宅勤務制度導入のメリットのひとつは、交通費やファシリティコストを削減できる点です。従業員数に比例して、経費削減の効果は大きくなります。営業活動や通勤にかかる交通費や、オフィス賃料、水道費・光熱費などを抑えることが可能です。
こうしたコストを最小化することで企業の利益率向上につながるでしょう。
業務効率や生産性向上が期待できる
自宅は、基本的にひとりの空間であるため、従業員が集中して働きやすいといえます。「上司や同僚に話しかけられる」「電話が鳴り響く」など、業務を妨害する要因が少なく、ストレスを感じにくくなります。また、突発的な業務が発生する可能性も低く、計画通りに業務を進められます。
在宅勤務では、従業員が業務に集中でき、業務効率や生産性の向上が期待できます。
場所にとらわれず優秀な人材を採用できる
事業を拡大し利益を上げるためには、優秀な人材の確保は欠かせません。
働き手は、給与や福利厚生などの待遇面だけでなく、労働環境も重要視しています。柔軟な働き方である在宅勤務を導入することは、企業のアピールポイントになります。魅力的な企業であると判断されれば、より多くの人材が集まるでしょう。
在宅勤務であれば、本拠地から離れた地方に住む人材など、場所を問わず幅広い人材を採用できます。
離職率の低下を図ることができる
在宅勤務のメリットは、自由な時間ができ、従業員のワークライフバランスが充実しやすい点です。従業員の満足度が向上し、離職する可能性が低くなります。
最近では、仕事を選ぶ際に、ワークライフバランスを重視する方も少なくありません。家事や育児と両立できる在宅勤務の導入によって、他の企業への転職を防止し、長期間従業員を確保できます。
在宅勤務制度の導入における企業側のデメリット
在宅勤務制度を導入したものの、業務がうまく回らず、在宅勤務を廃止した企業も存在します。そこで在宅勤務の4つのデメリットを紹介します。
- 情報漏洩リスクが高まりセキュリティ対策が必須となる
- コミュニケーション不足からパフォーマンス低下の恐れがある
- 勤務管理や評価が困難になる
- 導入コストが発生する
情報漏洩リスクが高まりセキュリティ対策が必須となる
在宅勤務では、情報漏洩やウィルス感染のリスクが伴います。以下の例のようなセキュリティ事故が起こり得るため、セキュリティ対策は必須です。
- 知らないメールアドレスから届いたファイルを開き、社用のパソコンがウィルスに感染
- 社用パソコンで、業務とは無関係のWebサイトを閲覧してウィルスに感染
- Wi-Fiアクセスポイントの乗っ取りにより、クラウドサービスのIDやパスワードが流出
- 公衆無線LANを使用し、画面を監視されて情報を抜き取られた
情報漏洩を起こすと、損害賠償はもちろん、原因特定や再発防止に向けた措置などでさまざまな費用が発生します。社会的な信用を失い、取引先や顧客を失う恐れがあるため、ルールの徹底や従業員のセキュリティリテラシーの向上は必須といえます。
コミュニケーション不足からパフォーマンス低下の恐れがある
在宅勤務では、従業員同士が直接顔を合わせる機会が少なくなり、コミュニケーション不足に陥りがちです。チャットツールを使用したテキストコミュニケーションでは、言葉のニュアンスが伝わらず、意思疎通が図りにくくなります。特に、連携や情報共有が必要な業務では、著しく生産性が低下します。
また従業員は、上司や同僚に気軽な相談ができず、従業員のモチベーションが低下する可能性が高まる恐れがあります。
勤務管理や評価が困難になる
在宅勤務では、業務の開始や終了時間、勤務態度などを管理しづらくなります。大規模な企業であれば、同じ会社の中で在宅勤務を導入できる職種と導入できない職種が存在し、より勤怠管理が煩雑になるでしょう。
勤怠状況を正確に把握できない理由から、成果を基準とした評価制度になり、適切な人事評価を行えなくなる可能性があります。他にも、「仕事とプライベートの時間を区別できず、労災の範囲が曖昧になる」というデメリットも存在します。
在宅勤務制度を導入する前に、勤務管理や評価制度についても見直しを行う必要があります。
導入コストが発生する
自宅でも、従業員がオフィス勤務時と同様のパフォーマンスを発揮するためには、設備投資が発生することも考えられます。
一般的には、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの費用は企業が負担します。仕事で必要な備品に関しても、企業が負担するケースが多いです。他にも、勤怠管理やプロジェクト管理などのITツールの導入には、さまざまな経費がかかることも意識しておきましょう。
コストを安く抑えると設備が不十分になり、生産性の低下につながるため、注意が必要です。
在宅勤務制度の導入における被雇用者側のメリット
在宅勤務は、被雇用者にもさまざまなメリットがある働き方です。
- ワークライフバランスが充実する可能性が高まる
- 通勤時間が短縮され有効時間が増える
- 対人関係や環境などの外的要因によるストレスが軽減される
ワークライフバランスが充実する可能性が高まる
オフィスへの出社が不要となれば、家族との時間や自分の時間など、プライベートな時間が増加します。「家事や育児、介護をしながら働く」という選択もできるため、ワークライフバランスを充実させることが可能です。
生活に合わせた柔軟な働き方ができることで、労働意欲の向上にもつながります。
通勤時間が短縮され有効時間が増える
在宅勤務によって、通勤時間がなくなると、自由な時間が増加します。家事や育児に時間を割けることはもちろん、キャリアアップに向けた、スキルや資格の取得に時間を注ぐこともできるでしょう。
対人関係や環境などの外的要因によるストレスが軽減される
在宅勤務では、基本的に一人の空間になるため、ストレスに悩まされる可能性が低くなります。
オフィス勤務と比較して、突発的に対応する業務も発生しにくく、自分のペースで仕事を進められます。人間関係や職場環境に関する悩みが減り、パフォーマンスを発揮しやすくなるでしょう。
在宅勤務制度の導入における被雇用者側のデメリット
当然、被雇用者にも在宅勤務のデメリットが存在します。
- オンとオフの切り替えが難しくなる
- 自宅の環境整備(労働環境の整備)が必要になる
- コミュニケーション不足によるモチベーション低下や成長機会を失う恐れがある
オンとオフの切り替えが難しくなる
在宅勤務では、自宅を就業場所とするため、仕事とプライベートの区別をつけにくくなります。日中に仕事が完了せず、深夜まで仕事を続けてしまうと、オフィス勤務よりも勤務時間が長くなる可能性もあります。
勤務時間を明確に設定したり、仕事とプライベートの場所を変えたりして、オンとオフのメリハリをつけましょう。
自宅の環境整備(労働環境の整備)が必要になる
オフィス勤務時と同様のパフォーマンスを発揮するには、自宅の環境整備が重要です。
パソコンやスマートフォンなどの通信機器は支給してもらえますが、通信環境や机、椅子などは自分で用意しなければいけません。そのため、環境整備のコストがかかります。
もし、自宅に専用の部屋やスペースがなければ、集中して仕事に取り組むことは難しいです。コワーキングスペースを活用することも検討しましょう。
コミュニケーション不足によるモチベーション低下や成長機会を失う恐れがある
在宅勤務では、社内の従業員と直接顔を合わせないため、コミュニケーション不足に陥りがちです。相談できないまま一人で問題を抱えてしまい、生産性やモチベーションの低下につながる場合があります。
新卒や転職者であれば、コミュニケーション不足によって、社内にうまく馴染めていないと感じるかもしれません。
また、オンラインでは社内研修が難しく、成長機会を失う恐れがあります。
在宅勤務制度を導入する際のポイント
前述した通り、在宅勤務制度にはさまざまなデメリットがあるため、在宅勤務の導入時には3つのポイントに注意してください。
- クラウドツールやサービスを活用する
- 定期的なオンライン面談や社員同士の交流場を設ける
- コワーキングスペースやシェアオフィスの活用も検討する
各ポイントについて、もう少しくわしく解説します。
クラウドツールやサービスを活用する
コミュニケーション不足や生産性の低下、勤怠状況を把握しづらいなどのデメリットを解決するために、クラウドツールやサービスを活用しましょう。
ただし、導入するツールの数に比例して、ツール管理がより煩雑になります。同時に、情報漏洩のリスクも高まるため、業務内容に応じて必要なツールのみを導入しましょう。
定期的なオンライン面談や社員同士の交流場を設ける
在宅勤務でのコミュニケーション不足を防止するために、社員同士で交流できる機会を設けましょう。仕事の話だけでなく、気楽に雑談ができるような交流の場を意図的に作ることが重要です。
定期的なオンライン面談も、従業員のモチベーション維持やメンタルケアにつながります。ビデオ通話やチャットツールを通じて、気軽にコミュニケーションが取れる職場環境作りを目指してください。
コワーキングスペースやシェアオフィスの活用も検討する
「専用のスペースがない」「通信環境が整わない」など、在宅勤務が難しい従業員がいる可能性もあります。急なテレワークへの移行では、準備期間がないため、仕事環境を整えられない場合もあります。
このような場合は、コワーキングスペースやシェアオフィスの活用を検討してください。すでに設備が整っているため、大半の業務を行えます。
まとめ
テレワークは、経費削減だけでなく、離職率の防止や採用競争力の確保につながる制度でもあります。テレワークの導入によって、従業員が生活に合わせた柔軟な働き方ができます。現在、約4分の1の企業がテレワークを導入しており、今後も多くの企業が取り入れる予定です。
しかし、在宅勤務には情報漏洩のリスクやコミュニケーション不足をはじめとする、さまざまな問題を抱えています。在宅勤務制度を導入する際には、管理体制や評価制度の見直し、コミュニケーション機会の創出方法、クラウドツールなども併せて検討することが大切です。