ノウハウ
ママ向けの販促戦略で必要なこと10個&マーケティングプロセスの基礎知識
2024年1月30日
出産を経て子育てが開始するママは家庭内での意思決定力や購買(消費)決定権を多く持ち、消費者市場において大きな影響力を持つようになります。
子育てや家事、仕事との両立など、さまざまな役割を果たすママたちだからこそ、サービスや商品に対するニーズは多岐にわたります。そのため、企業がママ向けに訴求することは単なる市場拡大だけでなく、ブランドの持続的な成功にも不可欠な要素です。
本記事では、「ママ向けの販促戦略が重要な理由」とともに、成功するためのマーケティングプロセスの基礎知識に焦点を当ててご紹介します。
なおターゲットとなるママの年齢については、厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計(報告書) Ⅱ 人口動態調査結果の概要」に準じ、第 1 子30. 9 歳、第 2 子32. 8 歳、第 3 子34. 0 歳(※1)と仮定しています。
目次
ママ向けマーケティングを検討すべきサービス・商品群
ママは商品やサービスを購入する際に持つ決定権「消費(購買)決定権」を多く持ち、その割合は、家族の買い物のうち約75%にのぼるといわれています(※2)。つまり、ママ向けのマーケティングを検討すべきサービスや商品群は多岐にわたります。
▼ママ向けマーケティングを検討すべきサービス・商品群一例
- 子どもの教育、習い事
- 子ども用品、おもちゃ
- 出産準備
- 旅行、アクティビティ
- 家具
- 1万円以下・5万円未満の家電
- 食材
- 日用品
- 家事代行
- 食品宅配
- 美容、ファッション
- 育児・家事・仕事の両立支援
- 外食・テイクアウト
- 携帯通信会社
- 電動自転車
- 生命・損害保険
- ペット関連
- サブスクリプションサービス
ママ向けマーケティングが重視される理由4つ
ママ向けのマーケティング活動が重視される理由には「ママは購買(消費)決定権を多く持つため」「長期的な関係を構築できる可能性があるため」などがあります。
企業はママ向けのマーケティング活動に注力し、課題やニーズ、価値観に合った戦略を展開することで、市場競争において有効な手を打てるはずです。
- ママは購買(消費)決定権を多く持つため
- 長期的な関係を構築できる可能性があるため
- 口コミ&情報拡散しやすい特性があるため
- 感情的なつながりが発生しやすい可能性があるため
1.ママは購買(消費)決定権を多く持つため
ママは家庭の主な意思決定者であり、購買(消費)決定権を多く持ちます。子育てや家庭経済にまつわるさまざまサービスや商品に関する意思決定を行うポジションであるため、企業にとっては開拓が必要な顧客対象層といえます。
なおママ向け商材やサービスでは「ママ目線の販促物や広告」が展開されることが多く、ママ向けマーケティング戦略の基本の一つとも言えます。ママ向けの広告クリエイティブのコツについては、「ママ向けの広告クリエイティブのコツは?媒体・広告の基礎知識と制作のポイントを解説」でもご覧いただけます。
2.長期的な関係を構築できる可能性があるため
ママは子育てや家庭管理において、信頼できるブランドやサービスを求める傾向があります。
そのため企業から見てママ層は、長期的な顧客関係を構築しやすい対象とされています。ママ層に支持されるようなサービスや商品を提供することで、長期にわたる関係が構築できる可能性が高まります。
長期にわたる関係性が構築できることで継続的な収益につながるほか、口コミや紹介などが発生しやすくなります。また競争優位性も発生し、競合他社への転換がしにくくなる心理も醸成されます。
3.口コミ&情報拡散しやすい特性があるため
ママのみならず女性同士は情報共有の観点が盛んであり、良い商品やサービスに対する口コミが広がりやすい性質があります。
良い口コミは信頼性が高く、他の層にも影響を与えやすいため、ママをターゲットにすることで口コミ効果を最大限に引き出せる可能性があります。
4.感情的なつながりが発生しやすい可能性があるため
顧客とブランドや商品、サービスとの間に築かれる感情的なつながりが強いと、顧客はサービスや商品に対して愛着を持ちやすく、リピート購買やポジティブな口コミの発信などが生まれやすいといわれています。
家族や子どもに関連するサービス・商品が感動や共感を呼び起こすとき、ママはサービスや商品に愛着を持ち贔屓にしやすく、コミュニケーションの質・量ともに増大するといわれています。
そのため企業は、ママと感情的なつながりを構築できるマーケティングアプローチを取ることが重要です。
ママ向けのマーケティング戦略で必要なこと6つ
ママの心に訴える効果的なマーケティング戦略には、どのような要素が必要かご紹介します。
- マーケットリサーチ&顧客インサイト獲得
- 「ママに訴求できる点」を洗い出す
- 子どもの年齢でターゲティングする
- 特有の課題やニーズの抽出
- 課題やニーズを解決する強みを強調する
- ママの可処分時間を獲得する手法を見いだす
1.マーケットリサーチ&インサイト獲得
ターゲットのライフスタイル、価値観、購買行動などを把握しマーケティング戦略の骨子とするため、市場調査を行いましょう。
アンケートや座談会などでママの忌憚ない意見を収集することで、本音やニーズを知ることができます。収集したリアルボイスを商品企画などに生かすことも可能です。
座談会・リサーチ・商品企画の詳細はこちらからもご覧いただけます。
2.「ママに訴求できる点」を洗い出す
サービスや商品から、ママに訴求できる点をすべて洗い出します。
主な項目としては、デザイン、機能、価格などのほか、利便性、安全性、効率性、課題やニーズを解決できる点などが挙げられます。
3.子どもの年齢でターゲティングする
ママや子どもに向けたサービス・商品では、ママの年齢というよりも、子どもの年齢によりカテゴリが区分されることが多くあります。
その場合、ターゲットの年代としては「0歳の赤ちゃんをお持ちのママ(31歳~32歳)」「小学校低学年のお子様をお持ちのママ(30代後半~40代前半)」などになります。
前提として、ママや家族のニーズや必要なサービス・商品は子どもの成長に従い変化します。サービスや商品によりますが、ママの年齢優先で区分すると子どもの年齢にばらつきが出てしまい、ターゲティングが不明瞭になる恐れがあるため、注意が必要です。
4.特有の課題やニーズの抽出
ママたちが日常生活で直面する課題やニーズを抽出しましょう。
普遍的な課題としては、時短に関するニーズ、子どもの教育と成長に関するニーズなどが挙げられます。これらを解決するためのサービスや商品は、特に訴求力があると考えられます。
▼ママたちが日常生活で直面する課題やニーズの例
時短に関するもの | 育児・家事・仕事を両立する中で時短につながるものを求める心理 便利な家電やツール、食事宅配サービス、スマート家電、宅配クリーニング、ネットスーパーなど |
子どもの教育と成長に関するもの | 子どもの発達をサポートするものを求める心理 オンライン教育プラットフォーム、習い事、塾、知育玩具、子ども向けの本やアプリ、ゲーム、動画など |
家庭と仕事の両立に関するもの | 家庭と仕事の両立をサポートするものを求める心理 復職や転職支援サービス、ベビーシッターや病児保育など子どもの預け先に関するサービス、両立に関するアドバイスやツールのサービス、リモートワークツールなど |
お出かけに関するもの | 子どもや家族との外出、アクティビティをサポートするものを求める心理 イベントや体験の紹介サービス、施設のサブスクリプションサービスなど |
共感欲求や、子育てにおける不安解消に関するもの | 他のママや親と、共感をもってつながれるコミュニティを求める心理 オンラインやオフラインでの親子イベント、育児支援アプリ、育児に関する不安や情報を共有できるプラットフォームなど |
家族の健康に関するもの | 家族全体の健康を促進するものを求める心理 健康食品、ジムやフィットネスでの運動不足解消、健康管理アプリ、オーガニック食材、栄養補助食品やサプリなど |
5.課題やニーズを解決する解決策を強調する
4で抽出した特有の課題やニーズを、サービスや商品で解決できる点を強調します。
サービスや商品を用いることで、4の課題やニーズがどのように解決するかを紐づけ、ママたちが自らの課題やニーズの解決策としてサービスや商品をイメージできるよう、ストーリーを構築しましょう。
たとえば時短につながる点や生活が効率的になる利便性、安心安全性、信頼性などは、課題やニーズの解決策として重要視されやすい項目です。
また、地域社会や社会的共感を呼ぶテーマにフォーカスし、サービスや商品が社会的な善に寄与している点をアピールすることも効果が見込めます。
6.ママの可処分時間を獲得する手法を見いだす
2020年時点での共働き世帯数は1,240万世帯で、全世帯(1,811万)のおよそ68%にあたります(※3)。すなわち、育児・家事のみならず仕事も担うママが全体の約7割となり、多忙である状況であることがうかがえます。
つまりママの可処分時間をいかに獲得するかが肝要だといえます。スマホ片手の隙間時間に情報が届きやすい媒体の選定や、ママの目を惹くクリエイティブの制作などが大切です。
ママ向け広告クリエイティブについてや、ママ向けキャッチコピーに関しての記事もぜひご覧ください。
マーケティングプロセスの基礎知識
効果的なマーケティングを行うためには、単に広告を出すだけではなく、慎重かつ戦略的なアプローチが求められます。ここではマーケティングプロセスの基礎知識をご紹介します。
- 市場調査
- セグメンテーション
- ターゲティング
- ポジショニング
- マーケティングミックス
- 実行・評価
STEP1.市場調査
市場調査は、マーケティング戦略を立てるために、市場の動向やトレンドを調査することを指します。
「定例調査」「定量調査」「覆面調査」「統計データ調査」などの調査手法により消費者やターゲットの実態・意識・評価などの情報を集めて分析し、市場動向を探ります。
STEP2.セグメンテーション
セグメンテーションはSTP分析のうちの一つで、市場を異なるグループに分割し、ニーズや特徴に応じ顧客グループ(セグメント)を識別するプロセスを指します。
(STP…「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の頭文字をとった一般的な分析方法)
市場調査後の分析結果を踏まえ、サービス・商品にとって最適なターゲット層を特定する手段であり、多様化する消費者ニーズに応じた戦略立案を行いやすくなる方法です。
セグメンテーションを行うと、サービス・商品を、「どの層」に「どのように」アプローチし、「どんな」販売戦略を用いるのかを、ターゲット別に考えることができます。
なおグループ化にあたり必要となる分類軸には、以下のような例があります。サービス・商品により異なりますが、複数を組み合わせて分類することが一般的です。
▼細分化にあたり必要となる分類項目例
地理軸 (ジオグラフィック変数) | 国や都市、地域といった地理的な要素 地域、地方、気候、人口規模、文化、生活習慣など |
人口動態軸 (デモグラフィック変数) | 人口動態に関連する要素 年齢、性別、職業、所得、世帯人数など |
社会心理学軸 (サイコグラフィック変数) | 個人の価値観や心理などに関連する要素 ライフスタイル、価値観、性格、社会階層など |
行動軸 | 行動や知識などに関連する要素 使用シーン、知識の有無、利用経験、利用頻度、求めるベネフィット、購買準備段階など |
細分化で定義したグループは「6R」基準に基づき評価し、各グループの有用性を確認することも大切です。グループ化前に「6R」を考慮した分類を行い、さらに「6R」によって検討するグループを絞ることもできます。
▼セグメンテーション細分化の指標となる「6R」
- Realistic Scale(市場規模):市場の経済規模(売り上げや利益確保の可否)を示す指標
- Rate of growth(成長性):市場の成長性を示す指標
- Rival(競合):競合他社・サービス・商品の量を判断する指標
- Rank(優先順位):ユーザーにとってのサービス・商品の優先順位をはかる指標
- Reach(到達可能性):ターゲットに、プロモーションや商品、サービスを実際に届けられるかを判断する指標
- Response(測定可能性):アプローチ効果の測定可否を判断する指標
「6R」評価ののち、それぞれのグループに対しテストマーケティングなどを行ったうえで、最終的なターゲット層を確定させます。
なお市場の魅力や企業の資源、短期および長期の目標などを考慮し、選定したターゲット層を優先順位付けすることもあります。
STEP3.ターゲティング
ターゲティングはSTP分析のうちの一つで、STEP2「セグメンテーション」で細分化された市場やターゲット層を選定するプロセスです。
そもそも市場には一人ひとり異なる膨大な数のユーザーが存在しており、すべてをターゲットに設定することは経営資源の面でも、マーケティング戦略面からも不可能です。
市場規模、自社・サービス・商品の強みや弱み、競合状況、環境要因などを考慮することが求められますが、ターゲティングを通じて特定の市場を狙うことで、特定のターゲットが抱える課題・ニーズに応えるサービスや商品を提供するための戦略を立案することができます。
その他、下記などについてもこの段階で考慮し、策定していきましょう。
- 競合分析
- 購買プロセスの理解
- ペルソナ策定
- ターゲット毎のプロモーション戦略
- 広告とメッセージの策定
- 顧客エンゲージメント獲得戦略
- マーケティング目標の設定
STEP4.ポジショニング
ポジショニングはSTP分析のうちの一つで、ターゲットにサービス・商品の魅力を認知させるための活動を指します。市場におけるサービス・商品の立ち位置を定めることでもあります。
ポジショニングでは、位置づけを可視化した「ポジショニングマップ」を作成します。ポジショニングマップは、競合他社との相対的な位置や、サービス・商品の特徴に基づくユーザーの認識理解に役立ちます。
マップ作成時では、2つの軸(X軸とY軸)などを用いた図式で表現します。軸の指標は、特にターゲットにとって重要かつ、相反するキーワードを抽出しましょう。
軸を定めたのち、図式内に競合他社を配置し、自社サービス・商品がとるべきポジションを配置します。このとき、自社が優位性を獲得しやすいポジションを確保することで競合との差別化をはかることができますが、図式の空白地帯にはビジネス的な困難が隠れていることもあるため、事前に調査することをおすすめします。
STEP5.マーケティングミックス
マーケティングミックスは、ユーザーの購買行動を獲得するために戦略・ツール・手法を組み合わせ、具体的な施策を決定するプロセスを指します。
組み合わせを考える際に用いるべきフレームワークには、企業視点の「4P」や顧客視点の「4C」があります。「4P」では「何を、いくらで、どこで、どうやって売るか」を実現できる施策を考え、「4C」では「顧客ニーズを満たせる方法」を実現できる施策を考える必要があります。
フレームワーク | 特徴 |
4P(企業視点) | 「Product(製品)」「Price(価格)」「Promotion(広告)」「Place(流通)」の4点からアプローチ方法を検討 |
4C(顧客視点) | 「Customer Value(顧客価値)」「Cost(コスト)」「Convenience(利便性)」「Communication(対話)」の4点からアプローチ方法を検討 |
なお、目標達成のために設定する業績評価指標であるKPIについてもこの段階で策定します。最終目標であるKGIを明確に定めておき、プロセスに対しKPIを設定することで、定量測定が可能となります。
STEP6.実行・評価
実行・評価では、5「マーケティングミックス」で策定した施策を実行し、KGI・KPIなどに基づき評価を行います。
このとき、施策結果のみを評価するのみならず、施策内容についてもさかのぼって評価判断を行います。善し悪しの原因を追究することで改善点が明確になり、施策の最適化を狙うことができます。
まとめ
ママ層は多くのサービス・商品にとって主となるターゲットです。ママに向けたマーケティング戦略を考える際は、彼女たちの置かれている状況やニーズ・課題などを分析し理解した上で、適切なアプローチ方法を考案することが大切です。
アプローチを行う前の検討段階からママを加味した要素を総合的に取り入れることで、販促戦略が成功する可能性も高まるはずです。
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参考・引用
※1…厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計(報告書) Ⅱ 人口動態調査結果の概要」
※2…C Channel株式会社 mamatas labo「「夫婦どちらが決めてる?」調査(2021年) 」
※3…厚生労働省「令和3年版 厚生労働白書-新型コロナウイルス感染症と社会保障-図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移」