ノウハウ
薬機法(旧薬事法)とは?ガイドラインをわかりやすく解説!
2021年5月31日
医薬品等の製造・販売・広告に関わる仕事をしている人は要チェック!薬機法(薬事法)についてくわしく解説します。
医薬品、化粧品等を製造・販売・広告する際には、法律で定められたルール「薬機法」を遵守しなくてはなりません。知らないままに医薬品等を取り扱うと意図せず違反してしまうこともあり、罰則や行政処分の対象になりかねません。必ずチェックしておきましょう。
今回は、薬機法について知っておくべきポイントをご紹介します。
目次
薬機法とは?
薬機法とは、医薬品、医薬部外品、医療機器、化粧品などの品質および安全性を確保するため製造や表示、販売、流通、広告などについて定められた法律です。正式名称を『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』といい、通称「医薬品医療機器等法」「薬機法」と呼ばれています。
この法律では医薬品等(医薬品、医薬部外品、医療機器、化粧品)の効果や効能などについて虚偽または誇大な記事を広告することや承認前の医薬品等を広告することなどが禁止されています。
これから、「薬機法の対象となる製品」「禁止されている広告」「違反した際の罰則」について、具体的に紹介します。
薬機法の対象となる製品とは?
薬機法の対象となる製品は以下の通りです。
・医薬品
・医薬部外品
・医療機器
・再生医療製品
・化粧品
具体的にどんな製品がその対象になるのか、定義を確認しておきましょう。
(薬機法第2条からの抜粋)
【医薬品の定義】
この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)
【医薬部外品の定義】
この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であって人体に対する作用が緩和なものをいう。
一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であって機械器具等でないもの
イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
ロ あせも、ただれ等の防止
ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であって機械器具等でないもの
三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの
【化粧品の定義】
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。
ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
要注意!健康食品・サプリメント等の扱いについて
ここで注意しておきたいのが、サプリメントについてです。サプリメントなどの健康食品は「食品」と定義されています。薬機法は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品について定められた法律ですので健康食品は規制対象ではありません。
しかし医薬品等ではない「健康食品」は、医薬品等のようにふるまうだけでも違反になってしまうのです。たとえば「〇〇病が治る」「便秘が改善」など、医薬品のような効果・効能を標ぼうすると薬機法違反になります。
薬機法で禁止されている広告
薬機法では、以下のような広告を禁止しています。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)より抜粋、要約
誇大広告等
効果や効能に関して虚偽や誇大な広告、効果を保証していると誤解されるような広告を掲載、流布してはいけないとされています。たとえば実際にはそのような効果がないのに「たるみが消える」「20歳若返る」などと表現した場合、違反になります。「何人も」とあるように、医薬品等を扱う企業であれば製造業者、販売業者、広告代理店等、業種を問わずすべての関係者が規制の対象です。
【第六十六条】
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限
がんなどの特定疾病に使用する目的の医薬品や再生医療等製品などについて、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告を制限しています。
【第六十七条】
政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であって、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
2 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。
承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止
未承認の医薬品等は、名称や製造方法、効果、効能、性能などについて広告してはいけません。
【第六十八条】
何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であって、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
ではどういったものが「広告」と定義されるのでしょうか。
広告と判断される3要件とは?
以下の3つの要件を満たすと広告と判断されます。
医薬品医療機器等法における医薬品等の広告の該当性について
※平成10年9月29日付け医薬監第148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知から抜粋
1.顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であること
2.特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
3.一般人が認知できる状態であること
たとえば店頭のPOPや紙面広告、テレビCM、製品パッケージはもちろん、店頭でのアナウンス、SNSでも消費者が上記3要件を満たしていると認識されれば広告に該当します。明確な形式はなく、あくまで消費者の認識により判断されるので注意が必要です。
薬事法に違反するとどうなる?
薬機法に違反すると、2年以下の懲役または200万円以下の罰金もしくはその両方が課されます。それだけではなく、社名公表によるイメージダウンや製品の回収など、二次的な損害も生じてしまいます。
要注意!旧薬事法が2014年に法律改正!そのポイントは?
「薬事法」という名称に聞き覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。2014年11月25日、医薬品・医療機器等のさらなる安全を確保するために従来の「薬事法」が改正され同時に名称も「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」へと改められました。
主な改正ポイント
主な改正のポイントをご紹介します。
医薬品・医療機器等に係る安全対策を強化した
これにより製造業者は、最新の知見に基づいて作成した添付文書を厚生労働大臣に提出しなければならなくなりました。
医療機器の特性をふまえたうえでの規制構築
医療機器はこれまで医薬品と同様に扱われていましたが、改正に伴い医療機器の章を新設し、規制することになりました。また医療機器の製造業を許可制から登録性にすることで手続きを簡素化しました。
再生医療等製品を新たに定義と安全対策の規制、承認制度を新設
法律で再生医療等製品を新たに定義し再生医療製品の「章」を創設。再生医療製品の特性をふまえた規制を導入しました。これにより少ない症例数でも有効性が推定され安全性が認められた場合、条件と期限付きで製造販売の承認が得られるようになりました。
薬機法は時代の変化に伴って今後も細かな改正がなされるはずです。関連業者さまは定期的に確認しておくことをおすすめいたします。
まとめ
薬機法の 規制の対象は、製造業者や販売業者だけではなく広告の制作会社や掲載媒体など、関連するすべての企業です。「クライアントの指示通りに広告を制作した」「受けとった広告をそのまま掲載した」といった場合にも違反になりますので、慎重に対応していきましょう。
ただ 法律の条文は膨大なため関連企業が本来の業務を行いながら、すべての内容を理解するとなると大変な労力が必要です。ポイントをおさえたうえで、困ったときにだけ薬機法に詳しい企業に相談するなどしてみましょう。