ノウハウ

AIを活用したデザインが時代を席巻?デザインAIがデザイナーの仕事を変えていく

Time 2023年6月2日

 

近年AI(人工知能)技術が急速に発展し、自動化できるジャンルや人間の手では難しい業務をAIに任せることが増えています。デザインの分野においてもAIを活用する流れは進んでおり、デザイナーの仕事を奪ってしまうのではないかという見解もあるほどです。

 

この記事では、AIを活用したデザイン(デザインAI)とはどのようなものなのか?AIが本当にデザイナーの仕事を奪う可能性はあるのか、見ていきたいと思います。

 

デザインAIとは?

デザインAIとは、その名の通りデザイン分野において利用されるAIのことをいいます。

 

現状デザインAIはまだまだ完璧なものとは言い難く、ロゴデザインや簡単なWebサイト制作などの分野においてAI化が進んでいるレベルです。具体的には、線画の着色やモックの作成などはAIが代替できますが、グレードの高いWebサイトを構築できるほどの技術レベルには達していません。

 

デザインAIができること

ここからはデザインAIができる機能について紹介していきます。デザインAIが得意としているのは

 

  • 画像認識機能
  • 自然言語処理機能
  • 予測・推論

 

といった部分です。具体的に見ていきます。

 

画像認識機能

画像認識機能とは、画像の中から特定の対象物を認識したり、対象と背景を識別したりする機能をいいます。画像のピクセルパターンからどのような対象が画像内にあるかをAIが分析して識別、対象とそれ以外を認識することが可能です。

 

この分野で研究が進んでいるのは顔認識技術でしょう。顔認識技術は、目・鼻・口といった顔の特徴点の位置や大きさ、顔の領域などをベースとして人物を特定する技術。入退室管理などにも利用されるこの技術はセキュリティレベルが高く、パスワードや鍵がなくても顔認証で出入りを可能にするため、なりすましを防止することができます。

 

デザイン領域における画像認識機能は、画像加工ツールを使用したトリミング、境界線を意識した色のカラーリングなどで効力を発揮します。なおこの画像認識機能は、平面画像以外にも3D領域や動画においても活用できます。

 

自然言語処理機能(NLP)

自然言語処理機能は、AIが人間の話す自然言語を理解するうえで、同義語や類似語をしっかりと分析・解析する機能です。NLP(Natural Language Processing)と英訳されることもあります。

 

デザイン領域でこの自然言語処理機能がどのような役割を果たすかというと、たとえばデザイン事例を探す際に「やわらかいイメージのデザイン」といった抽象的なワードで検索するとしましょう。

 

同じ意味を表す言葉でも発話する人物や文脈によって異なる単語が使われることがあります。自然言語処理機能が使われると、「やわらかい」以外にも「柔らかい」「ソフトな」などの類似表現を含めて抽出することが可能となります。

 

予測・推論

予測・推論とは、AIのディープラーニング(深層学習)を用いて学習した膨大なデータの中から未来予測を行う機能です。

 

たとえば、先ほどの例同様デザイン事例を探す場合などにおいて、どのようなデザインが今のトレンドにマッチしているかをAIが学習・分析し提案できます。

 

デザインにAIを活用するメリット・デメリット

デザインにAIを活用することで、具体的にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。それぞれくわしく見ていきましょう。

 

メリット

デザインAIを活用するメリットには

 

  • デザイナーでなくてもデザインが可能
  • 品質の安定化
  • 納期の短縮が図れる
  • 作業コストの削減

 

といったものがあります。

 

●デザイナーでなくてもデザインが可能

高品質なものデザインは難しくても、公開できるレベルのデザインであればデザイナーでなくても行えてしまうのがデザインAIのすごいところです。

 

条件を指定すれば蓄積された膨大なデータの中から、AIがユーザーに最適なデザインを提案してくれます。

 

今まではデザインができないためにデザイナーの言いなりになってしまっていた人も、自分が納得するデザインができる可能性も広がりストレスを抱えることが少なくなるでしょう。

 

●品質の安定化

デザイン作業では似たような素材やWebサイトを作成することがあります。人間が行う作業の場合には、その時の体調や精神状態により一定のクオリティを保てないケースもあるでしょう。

 

しかしデザインAIであれば、常に一定の品質でデザイン制作を行うことができます。汎用的なデザインを作成する際には、デザインAI活用が最適です。

 

●納期の短縮が図れる

デザインに関する仕事は、常に作ってはやり直しの繰り返しが起こりがちです。そのため、品質にこだわりすぎると納期に間に合わなかったり、その結果納得のいく作品を納品できずに公開したりすることも往々にしてあります。

 

その点デザインAIを活用すれば、上がってきたデザインをカスタマイズしたり、微調整したりするだけで済み大幅に作業時間を短縮できます。

 

●作業コストの削減

デザインAIを活用するようになれば、これまで外部のデザイナーに依頼していたバナー作成やロゴ制作などをAIが代わりに担うので、外注費の削減にも貢献。

 

上記の作業時間短縮と合わせて大きなコストメリットが図れます。

 

デメリット

一方、デザインAIを活用するデメリットとしては、

 

  • デザインの独創性は期待できない
  • すべての工程をAIができるわけではない
  • AIが未学習のものは提案できない

 

といったものがあります。

 

●デザインの独創性は期待できない

AIが得意としているのは、同一作業や決められた範囲における作業です。

 

そのため、デザインAIを活用してデザインを量産したり、一定のレベルのデザインを制作することはできますが、独創的なデザインを制作する必要がある場合には、AIを活用するよりもデザイナー自身の手で制作するほうが賢明です。

 

●すべての工程をAIができるわけではない

デザインAIで作業を自動化できるといっても、すべての作業工程でAIを活用できるわけではなく、結局のところ限定された範囲の作業に留まります。

 

作業の何割かを軽減することはできても、外部にアウトソースする場合のように100%作業を任せることはできません。

 

●AIが未学習のものは提案できない

AIが行うデザイン作業ですが、蓄積された膨大なデータの中からユーザーが指定した条件をもとにデザインパターンを算出して提案するものです。

 

つまり、デザインAIが学習していないもの(データに蓄積されていないもの)を提案することはできません。

 

そのため、条件によっては過去に提案されたものと同じようなデザインパターンが改めて提案されることもあり得ます。

 

よって、導入後もAIが学習を継続しなければならず、その分コストがかさむことが想定されます。

 

デザインAIのおすすめツール紹介

ここからは、デザインAIのおすすめツールをいくつか紹介していきます。

 

Webサイトやランディングページ(LP)制作、ロゴ制作、線画の着色、パッケージデザインなどさまざまなツールがすでに登場しているので、利用を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

 

AIR Design

「AIR Design」とは、株式会社ガラパゴスが提供するWebサイトデザイン制作ツールです。

 

優良ベンチャーから上場企業まで500社以上の企業が導入しているこのサービスは、毎月200万件以上収集されるデータを分析し定量化されたデザインを見出したうえ、勝てるデザインを提供してくれます。

 

制作したいサイトやLPのイメージや情報を指定すると、複数のデザイン案を取得できる仕組みです。

 

【参考】株式会社ガラパゴス
https://airdesign.ai/

 

Brandmark

「Brandmark」とは、会社名と関連キーワードを入力すると誰でもロゴが作成できるロゴ作成ツールです。

 

Webサイト用、名刺用、ブランドロゴなどさまざまなタイプのロゴが作成可能。ロゴ作成とお気に入りとして保存するのは無料で行えますが、購入しなければ正規データとして使用できません。

 

このBrandmarkは海外のサイトのため、説明文は英語表記となっています。キーワードを英語で入力する必要があることと、外国風のロゴが提案されることが多い点がネックかもしれません。

 

【参考】Brandmark
https://brandmark.io/

 

 Petalica Paint

「Petalica Paint」とは、株式会社Preferred Networksが提供するAI自動着色ツールです。

 

自身で描いたイラストをAIが自動で着色。自由に色指定も可能、ラフや写真を線画化、着色スタイル選択もできます。着色といった手間のかかる作業をAIに任せられることで、イラスト自体の制作に時間をシフトさせることが可能です。

 

【参考】Petalica Paint
https://petalica.com/index_ja.html

 

パッケージデザインAI

「パッケージデザインAI」とは、株式会社プラグが提供するパッケージデザイン好意度評価AIサービスシステムです。

 

AIがパッケージデザインを最短10秒、5段階スコアで評価・判定、消費者に好まれるデザインを生成することを可能にします。

 

1000万人以上の学習データおよび東大との研究開発で開発されたこのAIは、好意度やかわいい順などランキング結果をTOP100形式で抽出します。

 

約1時間で1,000案のデザイン案が生成されるので、デザインの方向性や新しいアイデア創出も思いのままです。

 

【参考】株式会社プラグ
https://hp.package-ai.jp/

 

デザインAIはデザイナーの仕事を変える

以上、さまざまなデザインAIツールを紹介しましたが、デザインAIの登場は間違いなくデザイナーの仕事を変えるものとなるでしょう。

 

これまですべての作業を自身で行っていたデザイナーも、クリエイティブな部分以外の調査・分析、単純作業、自動化といった自分でなくても行える作業をAIに任せることで、デザイン制作にかける時間を十分取ることができますし、アイデア出しに悩むことは少なくなるに違いありません。

 

その結果さらなる個性を磨くことができ、高単価案件を獲得できるデザイナーも増えることでしょう。

 

デザインAIはデザイナーの仕事を奪うのか?

一方で、デザインAIはデザイナーの仕事を奪うのではないか?と懸念する声もあります。

 

特に2045年頃に訪れると言われているシンギュラリティは、人間の能力をAIが抜いてしまう分岐点とされており、AIの進歩が留まるところを知りません。そのため、経験やスキルが不十分な一部のデザイナーにとっては、デザインAIと比較される存在としてますます競争が激しくなるのではないでしょうか。

 

まとめ

以上、デザインAIとはどのようなものなのか?またデザインAIは既存デザイナーの仕事を奪うのかについて見てきました。

 

デザインAIが行える領域は日々進化を遂げていますが、それでもまだ限定された範囲でしかありません。そのため、世間で言われているほど「AIの登場でデザイナーの仕事がなくなる」ということは今すぐに訪れることはないと思われます。それどころか、デザインAIをデザイナーがうまく活用すれば、今まで以上にデザイナーのスキルアップにつながりますし、業務効率が格段と上がって収入アップにつなげられる可能性は高くなります。

 

本記事を参考に、デザイナーとして活躍している方は、デザインAIを活用したデザインに挑戦してみることを検討してはいかがでしょうか。

 

 

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