ノウハウ
ペルソナデザインの重要性と具体的な作成の流れ
2023年4月18日
商品開発や広告の作成などマーケティング施策を行ううえで、ペルソナの設定は非常に重要です。
ペルソナのデザイン方法や活用法を理解することで、適切なマーケティング戦略の立案や企業課題の解決を図ることが可能になります。
目次
ペルソナデザインの基礎と重要性
ペルソナデザインとは「ペルソナをデザインする」ことを意味し、「ペルソナ設計」とも呼ばれています。
ペルソナとは元は心理学の用語で、心理学者カール・グスタフ・ユングは「人間の外的側面・自分の内面に潜む自分」と定義しています。
この定義が転じてマーケティング用語としては、「自社商品・サービスのターゲットであるユーザー像を具体的に定義したもの」という意味で使われています。
つまり、ペルソナデザインとは、「自社商品・サービスのターゲットであるユーザー像を具体的に定義すること」を指します。
「ペルソナ」と「ターゲット」の違い
マーケティング用語において「ペルソナ」・「ターゲット」はよく使われる言葉ですが、意味が正確に理解されていない場合もしばしばあります。
ペルソナとターゲットはどちらもユーザー像を定義する際に使用しますが、定義する情報の具体性が異なります。
たとえば、「20代男性」・「都内に住んでいる40代女性」などの大まかな属性で定義されるものがターゲット。
「都内在住30代男性、妻子あり(子供2人)、一軒家所有、趣味は釣りや登山、最近昇進したが部下との関係性構築に並んでいる」など、より具体的にユーザー像を定義したものがペルソナです。
UXデザインとの関係性
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーが商品やサービスなどの利用を通じて得るユーザー体験のことを指します。
またUXデザインは、ユーザー体験をより良いものにデザインするという意味で使われます。
UXデザインはペルソナと関係性が深く、ペルソナデザインが適切にできなければ質の高いUXデザインの実現は難しいでしょう。
なぜならユーザー体験をデザインするためには、ユーザーの目線に立ってさまざまな設計を行う必要があり、明確なユーザー像が必須となるためです。
このようにより良いUXをデザインする過程において、ペルソナデザインは非常に重要な役割を担っています。
ペルソナデザインで得られる3つのメリット
ペルソナデザインには大きく3つのメリットがあります。
- 顧客ニーズを的確に把握できる
- プロジェクト意思決定コストを削減できる
- 顧客インサイトを意識したマーケティング施策が打てる
顧客ニーズを的確に把握できる
ペルソナデザインによって、顧客のニーズを的確に把握できるというメリットがあります。
マーケティングにおいては市場動向や競合他社はもちろん、顧客のニーズを的確に把握することが非常に重要です。
ニーズを満たす最適な商品・サービスを作り出すことができれば、事業が成功する可能性は飛躍的に高まるでしょう。
プロジェクト意思決定コストを削減できる
事業やプロジェクトの進行において、意思決定を行うコストは規模に比例して大きくなります。
しかしペルソナデザインができていれば、「今回の施策は、ペルソナデザインによって定義したユーザー像が満足するものか」という意思決定・判断をするだけで済みます。
またプロジェクトメンバー全員が、ペルソナについて共通認識を持っていればより質の高い議論ができるでしょう。
顧客インサイトを意識したマーケティング施策が打てる
「都内在住20代男性」と「ITベンチャー企業のSNS担当者である、都内在住の20代男性、マーケティングの一環として、Instagramを始めて見たものの、全くフォロワーが伸びないで困っている」という2つのユーザー像があった場合、どちらがより精度の高いマーケティングができるでしょうか。
おそらくほとんどの方は後者と答えるでしょう。
ペルソナデザインを行うことで顧客インサイトを意識した施策が打てるようになり、より深く刺さるマーケティングが可能になります。
大多数に向けて発信するのではなく、デザインしたペルソナ像に合わせて施策を打つことでユーザーの興味・関心を刺激できる可能性が大幅に高まります。
ペルソナの具体的な作り方
続いてペルソナの具体的な作り方・デザイン方法を紹介します。
ペルソナをデザインする際には下記の手順で進めていきましょう。
- 顧客のデータ・体験談を集める
- データから顧客インサイトを読み解く
- 顧客ニーズを抽出し、発想する
- ペルソナをデザイン(作成)する
顧客のデータ・体験談を集める
まずは顧客のデータ・体験談を集める工程から始めましょう。
既存事業がある場合には今までに蓄積された顧客データを集め整理します。
新規事業の場合には、既存事業にて保有しているリストとの親和性があればそのまま利用できますが、親和性がない場合にはアンケートやインタビューなどを行い体験談を集めましょう。
この段階では、自社の商品やサービスに対してどんな考えを持っているかできるだけ多くの情報を集めることが重要です。
データから顧客インサイトを読み解く
集めたデータを整理し顧客インサイトを読み解いていきましょう。
顧客インサイトとは、顧客自身も認識していない言語化できていない本音を指します。
潜在ニーズよりも深い部分にある部分を読み解いていくことで、顧客が本当に求めているものは何かという部分を見つけていきます。
顧客ニーズを抽出し、発想する
顧客の共通しているニーズを抽出して発想しましょう。
顧客ニーズには大きく「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」があります。
表面上に現れているものが顕在ニーズ、顧客自身もあまり気付けていないものを潜在ニーズと呼びます。
まずは顕在ニーズを抽出するところからはじめ、顕在ニーズの奥にある潜在ニーズを抽出していきましょう。
例:なぜA社の暖房を選ぶのか→暖まるのが早く環境にも良いと聞いているから 顕在ニーズ:早く暖まりたい・環境にも配慮したい 潜在ニーズ:寒い状態が続くのが嫌だ、環境に配慮し、多用することへの罪悪感を減らしたい。など |
ニーズが抽出できたら次は発想していきましょう。抽出したニーズを持っているユーザーはどんな人物であるのか、年齢や居住エリアなど共通の特徴を探していきます。
ペルソナをデザイン(作成)する
最後に具体的なペルソナをデザインしていきましょう。
ここまででペルソナのアウトラインができていると思いますので、さまざまな項目で情報を定義し肉付けしていきます。
1人の人物が想像できるほどに細かく定義していくことがコツです。
年齢 職業 性別 収入 家族構成 居住エリア 結婚有無 学歴 趣味 週間 現状・悩み 性格 価値観 目標 仕事上の課題 など |
現状や悩み・価値観など、今までのストーリーを含めて定義するとより人物の解像度が上がり質の高いペルソナを作成できます。
デザインしたペルソナは必ず検証し、運用するなかで定期的に見直して改善しましょう。
マーケティングにペルソナを活用するために必要なこと
ペルソナをデザインしたからといってすぐにマーケティングに活用できるわけではありません。
ペルソナをマーケティングに活用するためには下記の3点が必要です。
- カスタマージャーニーを作成する
- ペルソナに寄り添ったマーケティング施策を実行する
- 取得データ上の各項目の推移を把握する
カスタマージャーニーを作成する
ペルソナを活用するためにもカスタマージャーニーを作成しましょう。
カスタマージャーニーとは、顧客(カスタマー)が商品・サービスを認知してから購入に至るまでの流れを整理・分析するフレームワークです。
カスタマージャーニーとともにペルソナを活用することで、分析において重要な顧客の行動やインサイトなどをより深く理解できるでしょう。
ペルソナに寄り添ったマーケティング施策を実行する
ペルソナを利用するためには、ペルソナに寄り添ったマーケティング施策を実行する必要があります。
デザインしたペルソナと全く異なるユーザーをターゲットとしたマーケティング施策にペルソナを当てはめたところで、意思決定の基準にはなり得ません。
それどころか混乱を招き、意思決定コストが大きくなってしまうでしょう。
ペルソナを前提としてマーケティング施策を立案し実行することが大切です。
取得データ上の各項目の推移を把握する
アクセス解析などによって、取得したデータの推移を把握することもペルソナの活用には欠かせません。
設定したペルソナに沿った意思決定の結果どうなったのか、数値の向上が現れているのかなどを各項目の推移を元に分析しましょう。
データと照らし合わせずにただペルソナに沿った施策を行うだけでは、最大限ペルソナを活用できているとはいえません。
ペルソナ自体にも間違いがある可能性がありますので、データと見比べながら少しずつ最適化していくことが必要になるでしょう。
ペルソナについての疑問を解決
ペルソナについてのよくある質問をピックアップして紹介します。
- ペルソナを作るのに時間がかかるのでは?
- 早く簡単にペルソナを作る方法はないの?
- ペルソナを作るよりもビジネス要件が優先されるのでは?
ペルソナを作るのに時間がかかるのでは?
ペルソナの作成には時間がかかります。
ペルソナはいきなり作っていくものではなく、さまざまな情報を収集したうえで定義していきます。
場合によってはアンケートやインタビューを必要とするため、時間だけでなく金銭的なコストもかかってくるでしょう。
ブラッシュアップしていく必要もあるため時間がかかることを想定しておきましょう。
早く簡単にペルソナを作る方法はないの?
時間をかけずに中途半端に作ってしまったペルソナは、マーケティングに活用したとしてもいい効果を生める可能性は低くなってしまいます。
無理してペルソナを作るくらいならば、ターゲットの設定に注力したほうがいい効果が得られる可能性が高まります。
ペルソナは時間をかけるだけの効果が期待できるため、時間がかかるという理由のみで作成しないという判断はやめましょう。
ペルソナを作るよりもビジネス要件が優先されるのでは?
基本的には、目的や達成したい目標の設定などがあったうえで事業がありプロジェクトがあるため、ビジネス要件の定義が優先されることが多いです。
ペルソナは事業やプロジェクトを進める際に活用すべき項目であるため、ビジネス要件定義→ペルソナの順番で行うことが一般的です。
しかし例外的に、先んじてペルソナをデザインしペルソナに合わせて事業計画やビジネス要件を定義していくというパターンもあります。
まとめ
ここまでペルソナデザインについて、メリットや作り方をはじめ活用方法について紹介しました。
ペルソナデザインは、企業がマーケティングを進めるうえで欠かせません。
適切にペルソナをデザインすることで意思決定のコストを削減や、顧客のニーズを的確に把握できることが期待されます。
本記事を自社のマーケティングにペルソナデザインを活用して、課題解決に活用してください。